リワークは、本来「休職中の人が元の職場へ戻るための準備をする場所」として設計されたプログラムです。これは日本うつ病リワーク協会でも明確に示されており、復職支援を目的とした専門的なリハビリテーションとして位置づけられています。
しかし、実際の現場では少し事情が異なります。 協会に所属している医療機関の中でも、
- 休職者のみを受け入れる施設
- 失職中の方(求職中の方)も受け入れる施設
この2つが存在します。
初めてリワークを検討する方からは、よくこんな質問を受けます。
「どちらの施設を選べばいいんでしょうか」 「休職者だけの方が良いのか、混在していても問題ないのか」 「なぜ施設によって受け入れ条件が違うんですか」
今回は、現場で多くの利用者さんを見てきた立場から、 休職者限定リワークと混在リワークの違い、メリット・デメリット、そして選び方 を分かりやすく解説します。
結論:休職中の方には“休職者だけのリワーク”をおすすめする理由
私はこれまで多くの方の復職支援に関わってきましたが、 休職中の方には、休職者だけが集まるリワークを強くおすすめします。
理由はシンプルで、 人は必ず、同じグループの人たちから影響を受けるからです。
リワークには、さまざまな思いを抱えた人が参加します。
- 「早く復職したい」
- 「職場に戻るのが怖い」
- 「転職したい」
- 「もう働きたくない」
もしあなたが「復職」を目標にしているなら、 同じ方向を向いている人たちと過ごす方が、心が乱れずに済みます。
逆に、失職中の方が多いグループに入ると、 「退職して楽になった」という話を聞く機会が増え、 復職への気持ちが揺らぐケースが本当に多いのです。
なぜ施設によって受け入れ条件が違うのか?
1. 収益構造の問題(現場では非常にリアルな理由)
医療機関も、当然ながら運営を続けるためには収益が必要です。
- 対象者を絞る → 参加者が減る → 収益が下がる
- 参加者が少ない → プログラム維持が難しくなる
そのため、 「休職者だけ」では定員が埋まらない施設は、失職者も受け入れざるを得ない という現実があります。
もし休職者グループと失職者グループを完全に分けるなら、
- 広いスペース
- 多くのスタッフ
- 安定した参加者数
が必要になりますが、これを満たせる施設は多くありません。
結果として、 “混在グループ”という形で運営する施設が増えている というわけです。
休職者と失職者が混在するリワークのメリット・デメリット
メリット:異なる立場の意見を聞ける
失職中の方は、なぜ退職に至ったのか、どんな苦労があったのかを語ることがあります。 その経験談は、復職を目指す人にとっても学びになることがあります。
「自分も同じ状況にならないように気をつけよう」 「こういう働き方は避けた方がいいかもしれない」
といった気づきが得られるのは、混在グループならではです。
デメリット①:復職へのモチベーションが下がる
混在グループで最も大きい問題はこれです。
失職者の方が語る、
- 「辞めたら楽になった」
- 「もうあの職場には戻りたくない」
といった話は、復職を目指す人にとって強い影響を与えます。
特に、復職への不安が強い時期には、 “退職”という選択肢が魅力的に見えてしまう ことがあります。
デメリット②:プログラムが深まりにくい
休職者と失職者では、視点がまったく違います。
- 休職者 → 「元の職場に戻るためにどうするか」
- 失職者 → 「次の職場でどう働くか」「前職の話はもう過去」
この違いが、グループワークでの議論を浅くしてしまうことがあります。
私が見てきた中でも、 「話が噛み合わず、深い議論にならない」 というケースは多くありました。
デメリット③:失職者の方は休みがちになりやすい
休職者には、
- 復職時期の目標
- 会社からの指示
- 主治医との相談内容
など、ある程度の“期限”があります。
一方、失職者にはそれがありません。
そのため、
- 参加目標を見失う
- モチベーションが下がる
- 欠席が増える
という傾向が見られます。
グループ内に欠席者が多いと、 全体の雰囲気が緩み、休職者の参加意欲にも影響する という問題が起こります。
休職者だけのリワークのメリット・デメリット
メリット①:同じ立場の人ばかりで馴染みやすい
休職者同士は、抱えている不安や焦りが似ています。
- 「復職できるだろうか」
- 「また同じ失敗をするのでは」
- 「職場の人にどう思われているか不安」
こうした気持ちを共有できる仲間がいることは、 リワーク参加の大きな支えになります。
メリット②:復職に向けた気持ちが高まりやすい
周りの人が復職を目指して努力している姿を見ると、 自然と自分も前向きになれます。
これは、休職者だけのグループだからこそ生まれる“良い影響”です。
メリット③:自分の見本になる人を見つけやすい
同じ立場の人が集まると、
- 「あの人はどうやって改善したんだろう」
- 「自分もあの方法を試してみよう」
といった“ロールモデル”が見つかりやすくなります。
これは復職準備において非常に重要なポイントです。
デメリット:欠席が続くと参加しづらくなる
休職者グループは、復職を目指して真剣に取り組む人が多いため、 欠席が続くと「行きづらい」と感じる人もいます。
- 周りが頑張っている
- 自分だけ遅れている気がする
- 気まずくて行きにくい
こうした心理的ハードルが生まれることがあります。
まとめ:休職中の方は“休職者限定リワーク”が最も適している
リワークは、ただ知識を学ぶ場所ではありません。 一緒に過ごすメンバーから受ける影響が非常に大きい場所です。
そのため、
- 復職を目指す人
- 職場に戻ることに不安がある人
- 同じ立場の仲間と励まし合いたい人
こうした方には、 休職者だけのリワークが最も適しています。
混在リワークにもメリットはありますが、 復職という明確な目標がある場合、 休職者限定の方が圧倒的に環境が整っています。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。症状については必ず専門医にご相談ください。



