リワークに参加を検討している方から、私はこれまで何度も同じ質問を受けてきました。
「どんな疾患の人が参加しているんですか」
「ADHDなどの発達障害の方と同じグループになりますか」
「うつ病以外の人もいるんでしょうか」
初めてリワークに足を踏み入れる方にとって、参加者の“顔ぶれ”はとても気になるポイントです。自分と似た悩みを持つ人がいるのか、逆にまったく違う背景の人ばかりなのか。それによって安心感も変わりますし、プログラムへの参加意欲にも影響します。
多くの方は、日本うつ病リワーク協会のホームページを見て施設を探します。そのため、
「“うつ病リワーク”と書いてあるのだから、うつ病の人だけが対象なんですよね?」
と考えるのは自然なことです。しかし、実際の現場では、もう少し複雑で幅広い状況が広がっています。
リワークに参加しているのは、うつ病だけではない
私がこれまで関わってきたリワーク施設では、実に多様な疾患の方が参加していました。
- うつ病
- 双極性障害
- 適応障害
- 不安障害
- ADHD
- 自閉スペクトラム症
- 身体症状症(身体表現性障害)
こうした診断名を持つ方々が、同じ空間で、同じプログラムに取り組んでいます。
実際、リワークのグループでは「自分と似た悩みを持つ人」もいれば、「自分とはまったく違う困りごとを抱える人」もいます。私はこの“多様性”こそがリワークの価値だと感じています。自分とは違う視点に触れることで、復職後の人間関係やコミュニケーションの幅が広がるからです。
発達障害が主診断でも、うつ病や適応障害が並存していれば参加できる理由
日本うつ病リワーク協会の認定基準には、対象疾患に関するルールが明記されています。 その中でも特に重要なのが次のポイントです。
- 対象疾患(主にF3・F4)を定める
- F3・F4以外を受け入れる場合は比率を明記する
- F8・F9が主診断でも、F3・F4が並存していればF3・F4として扱ってよい
ここで出てくる「F3」「F4」「F8」「F9」は、国際的な疾病分類(ICD)のコードです。
- F3:気分障害(うつ病・双極性障害など)
- F4:神経症性障害・ストレス関連障害(適応障害・不安障害など)
- F8:発達障害(自閉スペクトラム症など)
- F9:ADHDなどの行動・情緒の障害
つまり、ADHDや自閉スペクトラム症が主診断であっても、 うつ病や適応障害が併存していれば、リワークの対象として扱える ということです。
実際、私が関わった利用者さんの中にも、
「もともと発達特性があり、その生きづらさから職場で疲弊し、結果的にうつ状態になった」
というケースは少なくありません。
「うつ病リワーク=うつ病だけ」ではない現実に戸惑う人もいる
初めて説明を受けた方の中には、
「うつ病の人だけだと思っていたのに、発達障害の人もいるんですか」
と驚かれる方もいます。
気持ちはよく分かります。 “同じ診断名の人だけが集まる場所”をイメージしていたのに、実際はもっと多様だからです。
ただ、私は現場で働く中で、こうした多様性はむしろプラスに働くと感じています。
- 自分とは違う悩みを知る
- 他者の視点に触れる
- コミュニケーションの幅が広がる
- 復職後の人間関係に活きる
リワークは「社会復帰の練習の場」でもあります。 職場には、当然ながら多様な人がいます。 その環境を小さく再現したのがリワークだと考えると、むしろ自然な姿なのです。
発達障害に特化したプログラムを設けている施設もある
一方で、施設によっては疾患ごとにグループを分けているところもあります。
- うつ病中心のグループ
- 発達障害特化のプログラム
- 混合グループ
これは、施設の方針やスタッフの専門性によって異なります。
私自身、複数の施設を見てきましたが、 「どの疾患を同じグループにするか」は、医療機関の中でも長年議論されてきたテーマです。
- 「うつ病だけに限定した方が良い」
- 「双極性障害や発達障害は別にした方が良い」
こうした意見は今もあります。
だからこそ、利用者側も “自分はどんな環境で取り組みたいのか” を整理しておくことが大切です。
リワーク参加後に診断名が変わることもある
これは現場でよくある話ですが、 リワークに参加してから診断名が変わる人は珍しくありません。
休職時には、
- うつ病
- 抑うつ状態
- 適応障害
と診断されていた方が、プログラムを通して
「実はADHDの特性が強かった」 「発達障害の傾向が背景にあった」
と気づくケースは多いです。
私が担当した方の中にも、
「仕事がうまくいかず落ち込んでいたが、根本には発達特性があった」 「その特性に気づかず無理を続けた結果、うつ状態になった」
という方がいました。
診断は“固定されたもの”ではありません。 生活状況やストレス、環境の変化によって見え方が変わることもあります。
まとめ:リワークは“多様な人が集まる場所”。だからこそ価値がある
リワークは、うつ病の人だけが集まる場所ではありません。 実際には、さまざまな疾患や背景を持つ人が参加しています。
- 発達障害が主診断でも、うつ病や適応障害が併存していれば参加できる
- 施設によっては疾患ごとにグループを分けている
- リワークを通して診断が見直されることもある
こうした“多様性”は、復職後の社会で生きていくための大切な練習になります。
もしあなたがリワーク参加を迷っているなら、 「自分と同じ人がいるかどうか」だけで判断する必要はありません。
むしろ、違う背景を持つ人と関わることで、 復職後の自分にとって大きな財産になるはずです。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。症状については必ず専門医にご相談ください。



