あなたは、自分の考えが柔軟だと思いますか。それとも頑固だと思いますか。
思考が柔軟だと、いざ問題が起こった時にも、思い詰めたり、落ち込み過ぎずに対処することができるようになります。
今回は、思考を柔軟にすることの必要性や、発想力を高めるためのトレーニング法についてみていきましょう。
思考の柔軟性がないと陥りやすいデメリット
思考の柔軟性がないと、以下のようなデメリットが起こります。今までを振り返って思い当たることはないでしょうか?
- イレギュラーなことが起こると対応できない
- 他人の話を受け入れられず、イライラしてしまう
- 一つの考えに固執してしまい、なかなか解決策に結びつかない
イレギュラーなことが起こると対応できない
人は、思いもよない出来事が起こると、思考が停止して考えがまとまらなくなる特性があります。思考の停止は、ネガティブな感情を呼び起こし、不安の高まりを招いて、更なる思考の停止に陥ってしまいます。
思考の柔軟性が低いと、イレギュラーな出来事が起こる度に、この悪循環を繰り返してしまいます。
他人の話を受け入れられず、イライラしてしまう
自分と全く同じ価値観の人は1人もいません。職場もプライベートな場でも、多様な価値観の人が集まって意見を交わします。
自分と同じ意見にしか耳を傾けられず、違う価値観の話を受け入れらないと、不快感や嫌悪感が高まり、気持ちがイライラしてしまいます。
思考の柔軟性が低いと、気持ちの動揺につながりやすくなります。
一つの考えに固執してしまい、なかなか解決策に結びつかない
多様なアイデアを用意し、それをもとに行動できる事が、スムーズな問題解決へとつながります。
一つの考えに固執してしまうと、問題の解決を遅らせるばかりか、問題を悪化させることに繋がりかねません。
思考が柔軟であることのメリット
思考が柔軟であると、以下のようなメリットがあります。
- 新しいアイデアが思いつき、問題が解決されやすい
- ストレスを減らすことができる
- 失敗しても落ち込み過ぎず、すぐに立ち直ることができる
思考の種類 〜ロジカルシンキングとラテラルシンキング〜
ここではロジカルシンキングとラテラルシンキングという、2種類の思考を紹介します。
具体的な例題も取り上げて、それぞれの考え方を見ていきましょう。
この2つはどちらも必要な考え方で、どちらが良い悪いということではないということを、あらかじめお伝えしておきます。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは、「前提」→「推論」→「結論」という道筋をたどる考え方です。
『A』という前提をおき、「AだからB」「BだからC」という推論をたどり、「結論はC」という答えにたどり着きます。
物事を順序立てて考える、ルールや常識に従って考える方法を指します。
ラテラルシンキング
ラテラルシンキングとは水平思考とも呼ばれる考え方です。エドワード・デボノが提唱した思考です。
「前提の置き方」に着目し、前提そのものを覆す発想をすることで、これまでにない新しいアイデアを生み出そうとする考え方です。
ルールや常識にとらわれず、多様な視点から物事を見ることで、直感的な発想を生み出す方法です。
例題から読み解く2つの考え方のアプローチ
例題)
『信号機があっても車による衝突事故が絶えない交差点がある。事故を減らすにはどうしたら良いか』
ロジカルシンキング | ラテラルシンキング |
「ドライバーが注意するためには信号や標識が必要」 ⬇︎ 「事故が絶えないのは、注意を引くものが少ないのだろう」 ⬇︎ 「更に標識や信号機を増やすことにしよう」 | 「そもそも信号機は必要なのか?」 ⬇︎ 「ドライバーが自分で注意する方法はないか?」 ⬇︎ 「信号機を撤去して、代わりに、より低速に速度制限しよう」 |
あなたは、「危険な場所には信号機を設置すれば問題が解決する」という考えに固執していないでしょうか。
日本は、信号機大国です。警察庁が公開している「都道府県別交通信号機等ストック数」によると、令和3年度末時点で、全国の信号機の数は、20万7421と、世界最高レベルです。
常に信号機を見続けている私たちは、何かあれば信号機を設置すれば問題が解決するという思考に偏りやすくなります。
参考として、以下に信号機を撤去したことで問題の改善に繋がった、世界の取り組み例を紹介します。
ドラハテン(オランダ): 2007年に実験的に全ての信号機を撤去。すると年間の王通事故発生件数が8件から1件に減少し、なおかつ交通量が40%上昇した。 |
ポイントン(イギリス) 2008年11月に中心部にある交差点の信号機や道路標識、さらに道路上のラインまで排除する「共有空間道路計画」を実施。実施後はその交差点で発生した事故の件数が減少しただけでなく、渋滞も減って周辺店舗への来客数が2倍に増加。 |
京都(日本) 2015年10月、京都市中京区では、「御池」「四条」「烏丸」「河原町」の各通りに囲まれた区域内にある4カ所の信号機を撤去し、速度規制を20キロに引き下げた。すると、撤去前の2015年3月〜8月の半年間には人身事故件数が4件あったのが、2015年11月〜2016年4月の撤去後半年間では0件に減った。 |
思考を柔軟にするトレーニング法
思考を柔軟にするためには、次のようなトレーニング方法があります。
- 前提や先入観を疑う
- 色々な体験をする
- 複数の選択肢を考える
- 紙に書き出して視覚化する
- まずは行動してみる
- 煮詰まったら他の事をして、その事から離れる時間を作る
前提や先入観を疑う
先ほど説明した、ラテラルシンキングを指しています。
例えば、「紙の雑誌が売れない」と悩む出版社ではどのような解決案が見られたでしょうか。
「雑誌は読むためのもの」という前提・先入観を疑ってみる方法をとり、本に「おまけ」をつけて、その「おまけ」をメインにしてみました。結果、バッグなどのおまけが欲しくて雑誌の購入数の増加がみられました。
色々な体験をする
人は、色々な体験を通して、その時に得た知識を別の物事にも活かしていきます。体験の幅や数が多いほど、今後何か壁にぶつかった時に役立つでしょう。
複数の選択肢を考える
複数の選択肢を考える癖をつけましょう。一つ目の選択肢で上手くいかなければ、順次、用意した別の選択肢を実施できます。
また、一つ目の方法で上手く場合でも、他の選択肢を実施した場合どうなっていたを、結果をもとに振り返っておくと有意義です。
紙に書き出して視覚化する
頭の中で考えていることは、実は自分が思っているより整理されていません。
一度紙に書き出して、自分の思考を整理するようにしましょう。
まずは行動してみる
初めから解決するための正解に繋がらなくても構いません。
人は行動することで、思考停止になることを防ぐことができます。行動することで、次の行動への足がかりになります。
頭でっかちになり過ぎず、まずは気軽なファーストアクションを大切にしましょう。
煮詰まったら他のことをして、その事から離れる時間を作る
考えが煮詰まって苦しくなると、新しい発想が浮かびにくくなります。一度、頭をほぐすために、その事柄から離れることも大切です。
離れている時に、ふと、新しい方法が生まれることもよくみられます。
思考を柔軟にするための6つのキーワード
最後に、思考を柔軟にするためのキーワードをお伝えしておきます。
何かを考える時に、このキーワードを念頭においてみてください。
- 逆転:物事を反対に考えてみる 例)真冬に美味しく食べられるアイスとは?
- 代用:物事を何かに代えてみる 例)小麦アレルギーの人向けに、米粉パンを開発
- 結合:色々な物事を組み合せる 例)音楽試聴、写真撮影など何でも出来るスマホを開発
- 強調:今より更に強調してみる 例)1年保証だった内容を、永久保証に変えてみる
- 除去:そこから何かを取り除く 例)扇風機から、羽根を取り除いた扇風機を開発
- 並び替え:順番を変えてみる 例)理由→結論ではなく、結論→理由で説明する
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は思考を柔軟にすることの必要性や、トレーニング方法についてみてきました。
問題が起こった時に落ち込み過ぎずに対処できるよう、普段から意識的に取り入れられる方法を実践してみてください。